• UPDATE

歯科の経歴や実績の「取材商法」について

外部ページURL

「取材商法」という言葉を皆さんはご存知でしょうか。一般的にはあまり知られていないかもしれませんが、医療業界——とりわけ歯科業界においては、長年にわたって広く行われてきた慣行です。今回は、その実態と問題点についてお話ししたいと思います。

「すごい先生だな」と思わせるしくみ

歯科医院のホームページを見ていると、こんな一文を目にすることがあります。
「院長が『未来を切り拓く歯科医師◯◯選』に掲載されました」
「ドクター◯◯◯(Webサイト名)にインタビューが掲載されました」
「芸能人の◯◯◯さんに医院を紹介していただきました」
このような掲載実績があると、ご覧になった方は「そんな本やサイトで取り上げられるくらいだから、きっと腕のいい先生なのだろう」と感じるのではないでしょうか。それはごく自然な受け取り方です。
しかし多くの場合、歯科医師側がお金を払って掲載してもらっている場合が多いのかなと思います。

取材商法とは何か

取材商法とは、「取材・掲載」という形式を使いながら、実際には掲載料を徴収することを目的としたビジネスのことです。出版社や運営会社が歯科医師に対して「先生を本やサイトで紹介したい」と持ちかけ、掲載の対価として費用を受け取る——これが取材商法の基本的なしくみです。
※昨今話題になる、SNS上でインフルエンサーが「あなたのお店の食事を私のアカウントで取り上げるので、飲食代は無料にしてください」と持ちかけてくる人として大丈夫なの?と思える行為と同類のことでしょう。
当院にも、「先生をぜひ弊社の書籍に掲載させて下さい」「インタビュー記事としてサイトに掲載しませんか」といった営業メールが、日常的に大量に届いています。歯科業界において、取材商法はそれだけ広く展開されているということです。

問題の本質

もちろん、世の中には本当に優れた医師を紹介しようという純粋な動機で作られた書籍やメディアも存在します。
しかし、取材商法の文脈で行われる「取材」や「掲載」は、そのような動機に基づいたものではありません。あくまでも、歯科医師からの掲載料を収益とするビジネスとして成立しているのです。
そして歯科医師側の動機もまた、純粋なものとは言い難い面があるのかなと思います。こうした本やサイトへの掲載を通じて、自らの経歴に「箔」をつけ、医院の集患につなげようとしている——それが実情かと思います。
そしてその掲載料は患者さんからの治療費なのでは?とも考えるわけです。
歯科医療に真摯に取り組んでいる歯科医師であれば、そのような売名行為に興味は持たないのかなとも思います。
自費治療のみを行う歯科医師は別として、取材商法に乗っかる歯科医師の質は、推して知るべしでしょう。

情報に接したとき、立ち止まってみてください

皆さんが「◯◯の歯科医師10選に掲載」「◯◯サイトに掲載」といった情報を目にした際には、ぜひ一度立ち止まっていただきたいのです。その本やサイトは、どのような基準で掲載先を選んでいるのか。費用が発生しているのか否か。少し検索してみるだけで、掲載料という形で堂々と載っているのを見つけられる場合もあります。

一般的な費用の相場

■初期費用
 写真撮影、ライターによるインタビュー、基本ページの作成
 30万〜50万円

■月額掲載料
 年間契約(2年縛りなども有り)が基本のため、年間36万〜60万円
 3万〜5万円

■オプション費用
 +数万〜数十万円
検索上位表示、動画埋め込み、求人機能の追加など

初年度の導入時には、合計で60万〜100万円前後のコストがかっています。

このような費用を医院側が支払って掲載してもらっているのです。掲示された情報を鵜呑みにせず、ご自身で確認する習慣は、信頼できる歯科医院選びにおいてとても大切なことだと思っています。

実体のないプロフィールはほかにも

材商法と同様の問題は、他にもあります。歯科医師のプロフィール欄には、ほとんど知名度のない「謎の機関」の認定医資格や、著名でない海外の歯科大学への「留学経験」といった記載が並んでいることがあります。一見すると華やかに見えますがその実態を挙げれば、運営母体が法人格ではなく個人となっていてレンタルオフィスにある「評価機構」の認定であったり、ただ海外の大学へ行って講習を受けたことを「留学」と言っているだけのことなのです。

こうした「実体のないプロフィール」については、あらためて別の記事でくわしくお話ししたいと思います。
歯科医院を選ぶ際には、ホームページ上の輝かしい経歴よりも、どのような考え方で診療に向き合っているか、どのような医療を提供しようとしているかを見ていただけると、より本質的な判断ができるのではないかと思います。正解はないのかもしれないので、何件か回って見るのが間違いないのかともふと思うのです。

特集一覧